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2007年 02月 25日

退化という進化・DEVO評

「先人よりいいものを作ろう」。物作りをする人間なら誰しも考えることだろう。電気機器なら、より小型化、軽量化または高機能化。自動車ならば、より低燃費で安全性の高い車を作ろうとするだろう。音楽も、よりいいものを作ろうとする点においては同じかも知れない。それを「進化」と言うのだろう。しかし、いいものを作るために、電気機器のように単純ではないのが音楽だ。時には「退化」することで「進化」することもある。

 De-Evolutionを略してDevoは、1974年にアメリカのオハイオ州で結成された。バンド名からすでに「退化」の兆しが感じられる。しかし「退化」はバンド名だけにとどまらない。彼らはライブで、おそろいのつなぎを着用し、エナジードームと呼ばれる円錐型の帽子をかぶり、ぎこちないロボットのような動きで演奏し「退化」した人間の姿を全身で表現した。もちろん音楽でも「退化」を表現する。

 「退化」のターゲットとなったのは、The Rolling Stonesの『Satisfaction』である。78年に発表されたファーストアルバム『退廃的美学論』に、この曲のカバーが収録されている。通常カバー曲は、原曲の雰囲気をある程度残しつつ、カバーするアーティストの色を出すものが多い。ところが、Devoの手にかかるとたちどころに「退化」する。まず、名曲と呼ばれているものを解体する。原曲のメロディーは完全無視。原曲を知っていたとしても一聴しただけではそれがカバー曲だとは判別できいない。そして、原曲にあった表情豊かなボーカルや、歪んだギターサウンドも全て無機質なボーカルやギター、シンセザイザーへとなり「退化」を完了させる。

 Devoは、その後のテクノやニューウェーブのアーティストや日本のPolysicsなどに影響を与えるなど、音楽の「進化」に貢献している。彼らは「退化」することによって新たな「進化」の道筋を示したのだ。
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# by 708-c | 2007-02-25 03:07 | 音楽批評A〜I
2007年 02月 24日

トイレット・スピッツ

 「家の中で臭いが気になる場所は」と質問すると、大方トイレが挙がるだろう。言うまでもなく悪臭がたつ場所だ。ならば、そこによく置かれているものは何だろう。そう、芳香剤である。臭いという現実からフローラルな香りへと誘ってくれるありがたい一品だ。そんな、臭さがありつつ芳しいというトイレのようなバンドがある。スピッツだ。
 
 結成から19年、デビューから16年。現在までに発表したシングルは31枚、アルバムは11枚。1995年にシングル『ロビンソン』が160万枚の売り上げを記録するなどヒットにも恵まれ、「2006年度オリコン好きなアーティストランキング」の2位と多くの支持を得ている。これだけでは、どこに悪臭があるのか理解できない。実際に彼らの曲を聴いてみなければならない。
 
 例として、前述の『ロビンソン』が収録されており、169万枚の売り上げを記録したアルバム『ハチミツ』を取りあげてみる。まず、歌詞を中心に聴いてみよう。『愛の言葉』は戦争を連想させる。猟奇的な世界観の『トンガリ’95』。性的な連想をしないではいられない『グラスホッパー』。というように、色恋沙汰を歌ったものが多い他の流行歌とは、一線を画すアクの強い歌詞を持つ曲の数々に気付く。つまり、歌詞は臭さのあるトイレにあたると言える。
 
 ならば、芳香剤にあたるのは何か。次にアルバム『ハチミツ』をもう一度聴いてみる。今度は全体的に、特にメロディーを中心に聴いてみる。すると不思議。耳障りのいい良質なメロディーがなんとも芳しい。ポップなメロディーにつられて思わずアクのつよい歌詞も無意識口ずさんでしまうだろう。これは、スピッツのメロディーが有能な芳香剤として作用し歌詞の臭さを打ち消している証である。

 もし、現実の世界の臭さに嫌気が差した時は、スピッツの歌詩を通してその臭さを受け入れつつ、ポップなメロディーで歌い飛ばしてしまおう。そうすることで、全てを水に流してスッキリできるのだ。
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# by 708-c | 2007-02-24 18:45 | 音楽批評S〜Z
2006年 11月 03日

The Ordinary Boys - How To Get Everything You Ever Wanted In Ten Easy Steps

 「さて、これからどうしようか」。前二作では脇目もふらず走っていた。やがて、疲れて休憩をとると、周りがよく見えてくる周囲を見回すと、いろいろ見えてきた。そんな中の一つにクラブ(むしろディスコか)があった。前からちょっと興味あったんだよね。ちょっと寄っていくかという感覚。

 これがThe Ordinary Boysの三作目にあたる『How To Get Everything You Ever Wanted In Ten Easy Steps』の根底にある感覚だろう。前作までにはあまり見られなかった、ディスコテイストの楽曲が多く見られるけれども、今作では未だクラブの客にはなりきれていない。とうよりも、ディスコの感覚でクラブに来てしまったようだ。それをなんにも悪びれない。むしろ、それが自分だと主張している。
 
 なにせ、シンセの音が浮いている。シンセを入れたらそれっぽくなるだろうと、無理矢理曲にシンセを入れた感じがする。クラブになじめなくてもそれでもいいやという開き直りのようなものが、作品全体を貫いており、これまでにない印象を与える。単純な足し算では表せない予測不能性があり、この路線はおもしろい。しかし、同時にとっちらかった感もある。この部分は判断が分かれる所だろう。
 
 今後、もう少しクラブに居座るか、他のところへ行くかはわからない。しかし、これからも様々な領域へ足を踏み入れ、王道ではない作品を以後リリースすることを期待したい。
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# by 708-c | 2006-11-03 19:53 | 音楽批評S〜Z
2006年 11月 02日

UKロックの近況に思う

 UKロックの復権となるのだろうか。ここ数年イギリスから多数の新人バンドがデビューしている。例を挙げると、フューチャーヘッズ、フランツ・フェルディナンド、マキシモ・パーク、最近では、アークティック・モンキーズ、エディターズ、ミステリー・ジェッツなど枚挙にいとまがない。この現状を目の当たりにして、現在同様多数の新人が華々しいデビューを飾っていた、ブリット・ポップ期と現在の状況の間に関連を感じずにはいられない。
 
 ブリット・ポップ期前夜、イギリス音楽界は、テイク・ザットなどの自国産ポップ・ミュージックと、ニルバーナを筆頭とするアメリカ産ロックの前に、UKロックは風前の灯火という状況であった。そのため、プライドを傷つけられる恰好となった「ロックの伝統国」であったイギリスは、なんとしても自国産ロックの復権を必要としていた。また、政治界では、ブレア率いる労働党が明日への期待を振りまいていたという政治変革の時期であり、この二つの要素が結びついたとき、ブリット・ポップムーブメントはあっという間に絶頂を迎えたのである。しかし、政治変革期という時勢に乗っていた性格上、その終焉もあっという間であった。さらに、UKロック自体もムーブメントの終焉によって、一斉に勢いを失いUKロックの復権は失敗に終わり、失望という呪縛だけを生み出す形となった。
 
 しかし、リベンジの時が来たようだ。個人的には、今現在のUKロックの活況を、ブリット・ポップ期に果たせなかった復権への再チャレンジであり、「第二次ブリット・ポップムーブメント」と位置づけている。果たして、この再チャレンジは成功するのだろうか。一部では新人バンドに対して、単にニュー・ウェーブの焼き直しだと揶揄されている。成功のポイントとなるのは、冒頭の新人バンド達がいかに、前回のチャレンジャーの多くが成し遂げられなかった音楽的新機軸を打ち出すかだろう。それを成しえた時、ブリット・ポップの呪縛が解けるだけではなく、ブリット・ポップムーブメントによるUKロック復権の時が到来すると考えている。
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# by 708-c | 2006-11-02 22:49 | その他の批評
2006年 11月 02日

くるり- NIKKI

それまでの自身の音楽性をくるりと方向変換させた、通算6枚目のアルバム。くるりって結局なんだ?この作品の前までではそんな印象そ拭えなかった。もっと乱暴に言うなら、何がしたいのか?色々やってみたいんだろうなぁ。「パクるり」なんて陰口叩かれてる上に、岸田のビッグマウスに失笑。

 それでも、デビュー時から音楽性を大きく変化させながら、唯一かわらなかった部分がある。それは、ラブソング調の歌詞。片思い中の男の心情のような、ある種の切なさを伴った作風の歌詞だ。字面だけだとひどく甘く、クサイ歌詞。しかし、歌にするとそういったものを感じさせないところがストロングポイントだと思っていた。多分上記のネガティブな印象は、彼らの強みである歌詞と音とのアンバランスさから生じていたように思える。詩人になりたいのか、音楽家になりたいのか中途半端な感じがしていたのだ。

 しかし、くるりは「NIKKI」でメロディーと音色と歌詞の絶妙な配合比率で払拭させたと言える。ストレートなバンドサウンドと歌詞のバランスがいい。歌詞をじっくり聴ける。これまで感じていた冒頭の違和感が払拭された。お見それいたしました。立派に詩人であり、音楽家だ。今更ながらデビュー時に言われていたことを言いたい。「すごいぞ!!くるり」
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# by 708-c | 2006-11-02 01:39 | 音楽批評J〜R
2006年 11月 02日

デジタル化による音楽の未来

 「日本初、150万曲聴き放題の定額サービス」という触れ込みで、先日ナップスターとタワーレコードによる新しい音楽配信サービスがスタートした。これで既存のアップル社によるiTunes store、日本のレコード会社が共同で運営するレーベルゲート、KDDIによるLISMO等を加えて、ひとまず音楽配信サービスが一通り出揃った感がある。現状では、音楽配信サービスの煽りを受けると考えられる既存のレコード店との関係や違法コピーの問題等、インターネットによる音楽配信サービスには課題山積であり、インターネットによる音楽配信サービスが完全に定着したとは言い難い。しかし将来的にはコスト面、流通経費の節減、さらにはユーザーの利便性という面を考えても主流となるのは間違いないだろう。
 
では、インターネット音楽配信サービスが音楽自体に何をもたらすのだろうか。私は、アルバムという概念の喪失があると考えている。再生メディアはレコード以来、CDそして現在のデータという形で進んでいる。また、それと平行して録音メディアもカセットテープからMD、CD-R、そしてハードディスクやフラッシュメモリへと進んでいる。この過程でまず重要なのはメディアのデジタル化がもたらした事である。レコードやカセットテープなどのアナログのメディアではできなかった頭出し再生やランダム再生が可能となり、新たな視聴スタイルを可能とした。次にデータ化はデジタル化がさらに進むこととなる。
 
 ここにおいて、インターネット上の音楽配信サービスも一曲からの購入が可能なように、データ化において音楽は一つのパッケージから解放される。これにより、また新たな視聴スタイルが現れると思われる。つまり、一曲からの手軽な購入が可能となる音楽配信サービスでは、いかにしてその一曲を買わせるかということに力点が置かれることになり、一曲の重みがこれまでよりも増すと考えられるのだ。今後は、十数曲のアルバムよりも一曲のヒットが重要になるだろう。
 
 新たな音楽を巡るメディアの出現は、私たちに様々変化をもたらしてきた。インターネットによる音楽配信サービスはある意味、シングルへの回帰という変化を私たちにもたらすかもしれない。
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# by 708-c | 2006-11-02 01:36 | 音楽メディア批評
2006年 11月 02日

The Strokes - Is This It

2001 年に突如ニューヨークから現れた五人組。それは衝撃的だった。ギター2人にベースとドラム、ボーカルというバンドとしては標準的な構成だが、無駄のないシンプルな演奏とアレンジ、時にシャウトはするものの基本的に中音域を強調した淡々としたボーカル。とにかく何もかもがシンプルだった。そして、そのことが何かと華美になりがちな当時のシーンの中では何よりも新鮮だった。

 シンプルな演奏は下手をすると古くさく、また陳腐になりがちだ。しかし、この作品ではそうは聴かせないポイントがある。一つは先に述べたよう、華美になりがちな周りからのいい意味で浮いていることの新鮮さである。このことは音楽シーンに限らずよく見受けられることである。もう一つは、ハイプではないかということに由来する。つまり、ハイプではないのかということで一種話題にもなる。良いにしても悪いにしても話題になることによってリスナー、プレスの評価のハードルがあがってしまう。しかし、彼らはそのあがったハードルを自らの作品で軽々と越えている。そう、単純にいい作品で説得に成功したのだ。そして、いい作品の前に古くささや陳腐さなどを持ち出すことは無意味である。

 自分個人としてはハイプではないかという懐疑の目を説得するだけの力がある作品に今作を仕上げていると考えており、そのことを評価している。また、いい作品を作り上げることに対してハイプ否かなど、どうでもいいことだと思う。

 
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# by 708-c | 2006-11-02 01:32 | 音楽批評S〜Z
2006年 11月 02日

Bis - New Transistor Heroes

ブリットポップムーブメント終焉後の1997年に「恐るべき子たち」との触れ込みで、十代のデビューを飾ったBisのファーストアルバム。デビュー前はレコード会社間の契約争奪戦が繰り広げられていたことから大きな期待を背負っていたことがうかがえる。が、しかしこの作品以降はヒットに恵まれず本作も amazonで200円程度で売られていたり、レコードショップのワゴンで頻繁に見かけたりと決していい扱いを受けてはいないのが現実だ。その間に、ダンスミュージックへと音楽性も変化していっている。

 少々話がそれたが、本作は若さあるふれ非常にポップなものとなっている。チープとも感じるドラムマシーンから繰り出されるリズムも、三人のビッグマウスの中にもかわいげのあるボーカルも、彼らのひねているようで実は素直な3人組であることを感じさせる。まさに音楽が楽しくてしょうがない少年少女達の生き様が投影されている作品である。

 冒頭にamazonでたたき売られていたり、ワゴンに入っていたりという少々ネガティブなことに触れたが、こんなに楽しくて、ポップで、若返るような気がするほどに若さを感じることのできる作品だ。ここは手頃な値段で手に入れられる幸せに素直に感謝すべきではないだろうか・・・

 余談だがメンバーのマンダ・リンは地元グラスゴーのクラブで「ONNA-X」という名前でDJをしているらしい。
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# by 708-c | 2006-11-02 01:29 | 音楽批評A〜I
2006年 11月 02日

BMX Bandits - Theme Park

BMX Banditsはダグラス・スチュアート率いるグラスゴー出身のバンドである。グラスゴーでは他にも例は多々あるのだが、同郷のSuperstarやTeenage Fanclubとは親交が深くそれぞれのバンドのメンバーが在籍していたこともある。

 このアルバム特徴は上のジャケットとタイトルが象徴している。ジェットコースターに観覧車、コーヒーカップにメリーゴーランド。アイスクリーム屋にハンバーガーショップ。様々な要素が同居している場所。つまり遊園地のような作品だ。ヘタウマなボーカル、爽快なポップソング。切ないバラード。ともすると、とっちらかりそうなこれらの曲をあたかも遊園地に様々なアトラクションが同居しているのと同様に、この作品ではうまく一つにまとめられている。マイペースに活動をしてきたことも作品から余計な緊張感を排し、作品に暖かみを与えている。

 聴き終わった後には、きっと1日じゅう遊園地で遊び回り、出口を出た時に感じるのと同様の充実感を得ることができるだろう。
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# by 708-c | 2006-11-02 01:26 | 音楽批評A〜I
2006年 11月 02日

Wire - Pink Flag

「ロック以外なら何でもいい」これはWireの有名な発言であるが、彼らの音楽はこの言葉に凝縮されている。そこには、ロックの決まり切った曲の構成は存在しない。いうなれば、ただ一直線に突き進んでる音楽とでも言うことができようか。

 1976 年に結成され翌77年に発表された本作は、いわばパンクムーブメントまっただ中に放り込まれたものである。雨後の竹の子のごとく多くのバンドが登場しては消えていった時代だ。しかし、「ロック以外なら何でもいい」の言葉の下、ロックという形式からいかに逸脱するかを突き詰めることに成功していることは Wireの存在を際だったものしている。

 短いフレーズの反復。吐き捨てるかのようなボーカル。収録曲の多さと、大部分が3分にも満たないこと。いかに自らのセンスを鋭く表現するかというテーマに対しての結果、できあがったのがこの作品である。

 パンクをどう解釈するかは人によって様々であろう。解釈する人の数だけあるだろう。自分個人としてはこのWireの自らに課したテーマに対して演奏技術は二の次にして、表現へのストイックな姿勢にパンクの本質を見いだしている。くどいようだが「ロック以外なら何でもいい」。Wireの作品を聴けばこの言葉が生をうける。そして心を揺さぶられずにはいられないだろう。c0104021_1223895.jpg
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# by 708-c | 2006-11-02 01:23 | 音楽批評S〜Z